ルポ 不法移民 アメリカ国境を越えた男たち
という本を読みました。
著者:田中 研之輔
刊行:2017/11/21
岩波書店サイト
https://www.iwanami.co.jp/book/b325116.html
著者はエスノグラフィーという対象の世界へと入り込みその実情を記録の上に紡ぎ出す手法を学んだ研究者で、この本でもそれを活かしルポの体裁をとりながら不法移民の男性達の姿を描いています。著者が対象に選んだのはよくあるドリーマーや今まさに越境している人々ではなく、カリフォルニアの路上で仕事待ちをしている不法移民の男性達です。彼らが貧困のループの中で適度な距離をとりつつ同じ境遇の仲間と肩を並べるようにして生きていた姿がここにあります。ごくごくまれに得られるのは単発の低賃金の仕事で丸一日何も仕事が得られないのはざら、故郷へは仕送りどころか連絡を入れられず、地元住民からは嫌悪され、実情はホームレスとほぼ変わらない。それでも他にどうしようもないから彼らは日々路上に立ち続けます。
出だしで著者の経歴やエスノグラフィーという学問や彼らを対象に選んだ動機をさらりとまとめ、後はほとんどが彼らがどんな人間であるのかを描いています。終盤に学者らしい小難しいまとめが少しありますがほとんどはルポです。割と読みやすい本で意外な世界を知ることができますが対象に選んだ彼らのような人間がアメリカにそんなにいるのかや不法移民を知る上でどれだけの重要さを占めるかはちょっと疑問です。色んな本を見る限りドリーマーの親はたいてい彼らよりましな境遇にあるようなので。
気になったのは2ページ目の"身体の/で変化を捉え"という部分です。"の/"の部分は誤字でしょうか。
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