2016年2月24日水曜日

読書感想 警察官の本分

警察官の本分 いま明かす石巻署員がみた東日本大震災
総和社

2011年3月11日におきた東日本大震災を石巻市(宮城県)の警察官の視点で語った本です。
その時彼らの身に何が起きたのかが非常に読みやすく書かれています。
小学生の授業で引用できるくらい道徳的な語りになっており、警察官一人一人が非常に理想的な正義感の持ち主であるように描かれています。世の中には警察に良い印象を持っていない人もいるので、そういう人は警察組織を持ち上げすぎととるかもしれません(笑)。
警察官はあまりメディアで語らない為、せいぜいがニュースやブログといった外側から簡単に動向が記述される程度でした。それ故彼らの視点で語られた出来事の多くは新鮮です。あの当時の被災地の動向を知ろうとする際の一助にもなるのではないでしょうか。
応援に向かったら食糧事情から追い返されそうになったことにはじまり、津波にさらわれたが偶然の積み重ねと必死の行動で生き抜いたり、泣きそうな気持ちでぎりぎりまで交通誘導を続けたり、遺体の検分に必要な多くのものが足りず悪戦苦闘する様など多くの出来事が人間味のある細かな語りと各種状況を補完する記述と合わせて当時の逼迫した状況を教えてくれます。珍しい警察ものとしても切り口の変わった震災関連ものとしても一読の価値はあります。
悪い意味で気になった点は2つありました。
その一つがあちこちのサイトに見られる宣伝文句です。"問題は天災だけではない"から"トラブル"までのこの部分ですが、"未成年への影響"以外は本の締めの部分の要約です。この締めの部分は、震災からしばらくたつとこんな事もあったとざっくりした流れで語って終わりに入ろうとしている部分です。つまりこの締めの部分はこの本の内容自体を要約したものではありません。ここを宣伝文句として使われるとこの本の内容に関して誤解を与えてしまいかねません。何故ここを要約して引用したのでしょうか。
もう一点は私がどうでもいい細かいことを気にする性分だからでしょう。5ページ目の"違反車両を"から"さすがにこんなものに追いかけられたことはない。"の部分です。"さすがに"とつなぐのは不自然な流れになっています。前文の主体をどちらか一方に限定せずにおいたりして後半で"自分がこんなものに追いかけられるとは"などとしたりするなどもう少し自然にできなかったのでしょうか。まあ不自然に思ったのはここくらいでしたが。

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